妊娠すると、これまで食事に気を使っていなかった人も、自分のお腹の中ですくすく大きくなっていく赤ちゃんが、健康で産まれてこれるように、自分の食べるものを気にするようになりますよね。
アルコール、たばこは控えて、カフェインが入っているものは極力避ける。
筆者も、妊娠したときは、これだけは気を付けていました。
今回は、妊娠中に特に摂取したほうがよい栄養を中心にお伝えしたいと思います!
◆この記事を監修いただいた専門家
成田亜希子(なりたあきこ) 先生
・所属学会:日本内科学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本公衆衛生学会
・略歴:一般内科医として勤務。また、国立医療科学院でも研修を積み生活習慣病や感染症予防などの公衆衛生分野の知見を習得。保健所勤務経験もあり、母子保健にも詳しい。プライベートでは2児の母。
1. 妊娠時の必要栄養素量の考え方
妊娠時に必要な栄養素量は、妊娠時の年齢と活動量によって決まります。下表の厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2015)」を参考にしましょう。
(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015)」、「平成28年 国民健康・栄養調査」)
(妊娠初期:~13週6日 妊娠中期:14週~27週6日 妊娠後期:28週~)
上記の表から、以下のことが分かります。
20-30代の女性が不足している栄養素
全栄養素のうち、必要/推奨摂取量中80%以下しか摂取できていない栄養素は次のとおりです。(上記表中黄色色付け部分)
・炭水化物
・食物繊維
・ビタミンC
・カルシウム
炭水化物は、ダイエットのために制限されている若い女性は多いかと思います。
食物繊維は、ごはん等の穀物にも多く含まれていますので、炭水化物を減らすと、必然的に食物繊維の摂取も少なくなります。
食物繊維は、野菜、果物、海草類にも勿論多く含まれていますが、外食やコンビニ食が多くなると、一日に必要な量を満たすのは困難になります。
ビタミンC、カルシウムも同じくです。
上記4つ(炭水化物、食物繊維、ビタミンC、カルシウム)は、妊娠適齢期の女性が多く不足している栄養素です。
なので、妊婦さんは、これら4つの栄養素は特に意識して摂取したほうがよいといえます。
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2. やせや肥満の妊娠・出産への影響
非妊娠時のやせや妊娠期に体重増加が著しく少ない場合には、低出生体重児(出生体重2500g未満)分娩や子宮内胎児発育遅延、切迫流産、貧血のリスクが高まり、肥満や体重増加量が著しく多い場合には、糖尿病や巨大児分娩、帝王切開分娩、妊娠高血圧症候群のリスクが高まるとされている。
引用元:妊娠から産褥までの栄養管理 藤田医科大学病院 食養部 伊藤明美 著
体格区分別 推奨体重増加量(妊娠全期間)と1週間あたりの推奨体重増加量(妊娠中期~末期)
厚生労働省から平成18年に出された「健やか親子2」推進検討会に記されている妊婦の体格別体重増加量の目安を表にした。
体格区分 | 推奨体重増加量 | 1週間あたりの推奨体重増加量 |
低体重(やせ) BMI18.5未満 | 9~12kg | 0.3~0.5kg/週 |
ふつう BMI18.5以上25.0未満 | 7~12kg | 0.3~0.5kg/週 |
肥満 BMI25.0以上 | 個別対応 | 個別対応 |
(BMIの計算の仕方はこちら)
「生活習慣病胎児期発症起源説」とは?
1986年に英国のDavid Barker氏が唱えた。
胎芽期、胎児期、乳児期は、臓器や代謝系が形成される重要な時期で、この時に、低栄養または過栄養に暴露された場合、遺伝子配列は変化せず、その環境で生き抜くための間脳-下垂体-副腎皮質系のフィードバック機序、血管内皮の血圧制御系、肝臓の脂質代謝系、インスリン抵抗性等の制御系等代謝系の変化が起き、生まれた後も変化せず一生続く。
出生後の環境が子宮内と同じ栄養状態が続いていく場合には、形成された代謝系で対応できるが、出生後に、逆の過栄養(または低栄養)に暴露されると、適合できず、時間とともに生活習慣病を発症することとなる。
日本では、若年女性の著しいやせ傾向が顕著になってきていることや、低体重児が生まれる割合が高くなってきていることより、子供が大きくなったときの生活習慣病の発症リスクが懸念されている。
引用元:福岡秀興 胎児期からの栄養管理 日栄養士会56(10):4-13,2013
産まれてくる我が子にいいことはありません。
私は体質的に痩せ気味ですが、妊娠中に順調に体重が増えていたので、(+7-8キロ)適正体重(3400g)で我が子を産むことができました。
3. 妊娠時に注意が必要な栄養素や食品
(1) 葉酸
葉酸はビタミンB群の一種です。
葉酸が不足すると、脳や脊髄など「神経系」の元となる構造が正常に形成されず、無脳症・二分脊髄・髄膜瘤などの先天性疾患の発症リスクが高くなります。
しかも、「神経系」の元となる構造は妊娠4~5週目頃に出来上がるとされています。この時期は妊娠に気づくか気づかないかの微妙な時期。上記のような先天性疾患を予防するには妊娠前から十分に摂取しておく必要があるのです。妊娠を希望した時点で葉酸摂取を心がけるようにしましょう。ただし、必要な量の葉酸を食事で賄うのは難しいとされています。このため、厚生労働省は食事に加えて栄養補助食品から400μg/日のプテロイルモノグルタミン酸(葉酸)をサプリメントで摂取することを推奨しているのです。
ただし、過剰摂取には十分注意しましょう。
なお、400μg/日のプテロイルモノグルタミン酸という量は、食事性葉酸に換算すると、2倍の800μg/日に相当します。
(引用元:妊娠から産褥までの栄養管理 藤田医科大学病院 食養部 伊藤明美 著)
妊活中の方や、かかりつけ医から葉酸をとるように言われた妊婦さんは、不足分をサプリで補いましょう。
(2) ビタミンA
ビタミンAは、細胞の増殖・分化に関与するため、胎児の発達にとって必須の栄養素です。
必要量が増加するのは、妊娠末期の3か月で、初期・中期には付加は必要ないとされていません。
逆に、過剰摂取が神経管奇形を含む各種奇形を増加させるとの報告もあり、上限値2,700μgRAE/日を超えぬよう、サプリメントや栄養剤の投与に注意しましょう。
ビタミンAは、普段の食生活で必要量は充足しており(上記表参照)特別不足が気になる栄養素ではありません。
妊娠後期は通常より若干多くのビタミンAを必要としますが、サプリメントで補うほどのものではないかと思います。
(3) 鉄
妊娠期は、①胎児の成長に伴う鉄貯蔵、②臍帯・胎盤中への鉄貯蔵、③循環血液量の増加に伴う赤血球量の増加による鉄需要の増加があり、付加量(推奨量)は、妊娠初期2.5mg/日、中期・後期15.0mg/日とされています。
主に動物性の食品に多く含まれるヘム鉄の吸収率は20-30%であり、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄の吸収率に比べ高いため、赤身の肉や魚等の鉄を多く含む動物性食品を上手に取り入れるようにしましょう。
また、非ヘム鉄の吸収率はたんぱく質やビタミンCの摂取量が増加すると高まることから食品の組み合わせにも注意が必要です。
(4) メチル水銀
一部の魚介類には、メチル水銀濃度が高いものがあります。
一般的には健康に害を及ぼすことはありませんが、妊婦の場合には胎盤を通して胎児に移り脳の発育に影響を及ぼす可能性があるとされています。
よって、キンメダイ、メカジキ、メバチマグロ等は1回に80g、週一回までが目安とされていますので注意しましょう。
(5) リステリア菌
リステリア菌は、ナチュラルチーズ(加熱殺菌していないもの)、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンなどに含まれることがある食中毒の原因菌です。
妊娠中は、リステリア菌に感染しやすくなり、万が一感染すると、胎盤を通して胎児にまで感染が拡がることがあります。その結果、早産や流産・死産、胎児の髄膜炎や運動・神経障害の原因になる可能性があると報告されています。
リステリア菌は、食品を介して感染する食中毒菌で、塩分にも強く、冷蔵庫でも増殖します。
妊娠中は上記に挙げた食品は控えた方が無難です。
また、リステリア菌に限らず、妊婦さんは食中毒になると、重症化しやすいといわれていますので、十分に加熱殺菌されたものを食べるようにしましょう。
参考:妊娠から産褥までの栄養管理 藤田医科大学病院 食養部 伊藤明美 著
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